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  • 専門医に学ぶ講演会
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開催日: 2016年3月19日(土)

外科学セミナー2016

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー
2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方

講師

Clare R. Gregory DVM, DACVS
Emeritus Professor, Department of Surgical and Radiological Sciences, School of Veterinary Medicine, University of California, Davis, CA, USA
Staff Surgeon, PetCare Veterinary Hospital, Santa Rosa, CA, USA

関連ハンドアウト(参考資料)

オンデマンド

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.01
  • 一般外科/麻酔科

・脾臓の解剖学
 腹腔の左頭側4半部に位置する
 背側端(脾頭)は幅広い胃脾間膜によって胃の大弯に付着している
 重要な血管は脾動静脈と短胃動静脈部。術度出血は短胃動静脈部が多いので注意。
・脾臓の発達
 無脾症は子宮内での脾臓の発達不全である。
 副脾は先天的な断片に付けられた用語である。胃脾間膜で最も多く認められる。
 脾症は外傷後、腹腔内で生存する脾臓の断片に対して使われる用語である。
・脾臓の生理学
 脾臓は多様な機能を持つ臓器で、免疫監視と造血において積極的な役割を果たす。
 重要な役割:
  血液から微生物と抗原粒子を濾過する
  IgGと補体経路のサイトカインを合成する
  新たに生成された赤血球の成熟
  赤血球と血小板の貯蔵
  損傷したり古くなったりした赤血球の除去
 貯蔵機能:
  犬の脾臓は、赤血球量の10-20%および血小板量の30%を貯蔵することができる
  脾臓を通って循環する血液は循環パターンによって3つのグループに分類される:
   “急速プール” は脾臓に流入する血液の90%を占め、30秒以内に全身循環に戻る

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.02
  • 一般外科/麻酔科

・脾臓疾患の犬におけるバルトネラ、バベシアおよび血液向性マイコプラズマ種の分子的有病率-文献レビュー
 Bartonella spp が血管周皮腫の犬から分離された。
・脾臓の病理学
 全体的な脾腫 (脾臓の腫大)
 犬で最も多い原因:
  菌血症
  低グレードの敗血症
  病原体と壊死物質が脾臓で濾過される慢性感染性疾患
  感染性脾炎の特徴は好中球増加症であり、局所的な膿瘍を形成する場合がある
 免疫反応または細胞の過形成
  細胞性過形成は赤脾髄、または白脾髄、あるいはその両方で起こる可能性がある
 脾臓のうっ血
  うっ血性心不全
  門脈高血圧
  血管流出路の閉塞
  化学的刺激に対する脾臓被膜の弛緩
 脾臓の浸潤
  脾臓への異常な細胞や物質の浸潤は、腫瘍性疾患において認められる。
  腫瘍性原因による全体的な脾腫は、脾臓に正常に存在する細胞群を由来とした原発腫瘍によって生じる可能性がある:
  全体的な脾腫の腫瘍性原因で最も多いのは骨髄増殖性腫瘍である。
   リンパ腫、肥満細胞症
 限局性脾腫
  腫瘍性および非腫瘍性疾患によって生じる
  最も一般的な原因:
   結節性過形成
   脾血腫
   脾臓血管肉腫
  結節性過形成
   高齢犬に最も多く、偶発所見のことが多い
   猫ではまれ; 実質に対して脾洞構造が少ないことから、血液を貯留できない
 重要)結節性過形成、線維組織球性結節、腫瘍性結節は、術中の肉眼所見では鑑別できないことによく注意する
  血管腫
  血腫
  膿瘍:脾臓の膿瘍は犬ではめったに見られない。猫ではまれに認められる
  分節性梗塞:分節性脾梗塞は犬ではまれな病変であり、病理学的調査で認められる病変の1〜2%を占める
  プラーク:鉄症プラークは、良性の白~茶色斑で脾臓の表面によく認められる。老化現象? 過去の出血?
  腫瘍:血液系腫瘍 (血球由来)
      リンパ系、肥満細胞、組織球性、形質細胞、骨髄増殖性疾患
     非血液系腫瘍 (組織由来)
      血管肉腫、その他の軟部組織肉腫

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.03
  • 一般外科/麻酔科

・診断的画像検査法
・X線検査
 脾臓は通常、腹部中央部に認められる。
・超音波検査
 超音波画像は、脾臓の異常な構造の確認と転移性疾患に対する腹部スクリーニングに最も繁用される画像検査法である
・造影超音波画像(マイクロバブル)
 音響インピーダンスのミスマッチに基づき、マイクロバブルは超音波の後方散乱を増強することで、検査中の小血管をより明瞭に描出できる
 ヨーロッパではこの検査法が、肝臓病変の分類に一般的に使用されており、造影MRIおよびCTの結果と遜色がない
 マイクロバブルは医療では多岐に渡って利用されている
・健康犬における脾臓の造影超音波検査に鎮静が与える影響-文献レビュー
 ブトルファノールで鎮静した犬の造影検査。 脾門から生じる脾動脈は早期に現れ、注入の8秒後に強い増強が見られた
 その後、脾臓実質は不均質に増強された
 注入の17秒後、脾臓実質は徐々に均質になる
 ウォッシュアウト期には、増強が段階的にゆっくりと減少していく様子が観察される
 結果 – ブトルファノールによる鎮静は、脾臓の灌流を変化させなかった。
 デクスメデトミジンは脾臓の増強を有意に低下させ、検査期間中、実質は瀰漫性の低エコー源性を示していた。
 研究結果から、犬の脾臓造影超音波検査には、鎮静としてブトルファノールの使用を支持し、デクスメデトミジンの使用を禁忌とした。
・超音波検査
  脾臓血管肉腫の犬の最大25%には右心房の血管肉腫がある
・コンピューター断層撮影法

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.04
  • 一般外科/麻酔科

・診断的吸引およびバイオプシー
・針吸引またはニードル(Tru-Cut)バイオプシー
 針吸引またはニードル(Tru-Cut)バイオプシーで得られたサンプルの診断的有用性は様々である
 臓器全体のサンプルから得られた病理組織検査結果の診断的一致度は、60%から100%であることが様々な研究により報告されている
 造血性過形成と腫瘍については、良好に診断できる見込みが高い
・開腹による外科的バイオプシー
 開腹による外科的バイオプシーは、針吸引やニードル・バイオプシーよりも診断的バイオプシーが得られる可能性が高い
 巾着縫合によるコア・バイオプシー
 Tru-cutバイオプシー
 部分的脾臓切除術
・腹腔鏡バイオプシー
 脾臓辺縁部の病変はバイオプシーカップで採取できる
 より大きいサンプルには、 バイポーラー電気凝固法かレーザー凝固法を使用して出血をコントロールする
・脾臓血管肉腫の犬における肝臓病変の肉眼所見と組織学所見との関連性:79 症例 (2004-2009) – 文献レビュー
 肝臓に肉眼的異常が認められた犬58頭中29頭(58%)のみに、転移病変が認められた
 肝臓が肉眼的に正常であった犬は、肝臓の病理検査で転移が検出されなかった
 血管肉腫の犬では肉眼的に正常な肝臓のバイオプシーは必要ない。
 肝臓病変の肉眼的判断だけで治療を推奨することは間違いになる可能性がある
・血管肉腫と血腫の犬における血清中の血管内皮増殖因子-文献レビュー
 血清VEGF濃度は脾臓が正常な健康犬と比較して脾臓に腫瘤のある犬で有意に高かった
 血清VEGF濃度は血管肉腫と血腫の犬で有意差がなかった
 結論 – VEGFは脾臓病変のある犬に対する診断マーカーとして臨床的有用性を持つ可能性があるが、様々な脾臓病変の鑑別に役立たないかもしれない
・術前の考慮事項
 血液凝固プロフィールと血液型判定?
  濃縮血液または全血の血液クロスマッチ試験はヘマトクリット値24%以下の犬に行う;特に脾臓からの活動出血が疑われる場合
 完全血球計算、血清化学プロフィールおよび尿検査
 血圧を術前、術中、および術後に定期的に測定する
 術前、術中、術後は心電図をモニターする
 不整脈は脾臓摘出術を受けている患者でよく認められる
・脾臓腫瘤のため脾臓摘出術を受ける犬の治療における輸血の実施:542症例 (2001-2002)-文献レビュー
 脾臓摘出術のために来院した犬542頭中240頭(44%)に輸血を行った。
 輸血を受けた犬は受けなかった犬よりも病状が重く、心拍数、呼吸数、血中乳酸濃度が高く、プロトロンビン時間が長かった
 研究の結論: ショック、貧血、および凝固亢進は、脾臓摘出を受ける犬に輸血を行う適応であり、その原因は、血腹症とそれに関連する血液量減少であった
 輸血を受ける犬は悪性疾患があることが多く、長期生存できない確率が高かった

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.05
  • 一般外科/麻酔科

・犬の様々な外科処置における周術期赤血球輸血の必要性:207症例(2004-2013)-文献レビュー
 結果:脾臓摘出術と肝葉切除術を受けた犬は、それぞれ他の全ての施術を受けた犬と比較した場合、赤血球輸血を受ける傾向が有意に高かった
 結論: 脾臓摘出術および肝葉切除術を受ける犬は周術期に赤血球輸血が必要かもしれない
 これらの施術を行う獣医師は濃縮血液か全血をすぐに利用できるようにしておくべきである
 周術期赤血球輸血を受けた犬は術後2週間生存する可能性が有意に低かった
・胃拡張捻転の犬における不整脈の頻度、急性腎障害、入院期間に対するリドカイン治療の評価-文献レビュー
 来院時にリドカインで治療し( 2mg/kg/, IV ボーラス)、その後0.05 mg/kg/分で24時間定速注入した。
 不整脈および急性腎障害の割合はリドカイン群では有意に少なかった(それぞれp=0.001 およびp=0.045)
 入院期間中央値は対照群と比較してリドカイン群のほうが短かった(それぞれ、中央値48時間;範囲24-360時間に対して中央値72時間;範囲24-144時間)
・術前の考慮事項
 大型の脾臓腫瘤がある患者、または著しい血腹症のある患者は人工換気による呼吸支持を行う
 腫瘍細胞を播種する恐れがあるため、自己血輸血は推奨されない
・術後管理
 適切な静脈内輸液による支持と血圧の定期的なモニター
  術中に血圧維持のための昇圧剤を使用していた場合は、血圧をモニターしながら徐々に中止する
 ECG のモニターは継続して行う
 必要に応じて酸素供給と濃縮血液または全血輸血を行う
 疼痛管理
 栄養支持
 周術期直後の抗生剤投与は一般的に必要ない

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.06
  • 一般外科/麻酔科

・手術手技
・脾縫合 – 脾臓裂傷の修復
 腹部切開と卵巣子宮摘出術では一般的に起こる
 小さい裂傷はガーゼスポンジを数分間圧迫することでコントロールできる
 焼灼またはアルゴンビーム凝固はほとんど成功しない
 脾臓被膜は縫合糸を十分に保持できる
 被膜はPDSまたはモノクリル縫合糸で縫合してもよい
 有茎大網弁を使用して脾臓の裂傷を塞ぐ方法もある。 被膜に予めかけておいた縫合糸を有茎大網弁の上で結紮する。
 脾臓の複数の裂傷による出血をポリグリコール酸メッシュとゲルフォームシートでコントロールする方法もある。
・脾臓部分切除術
 適応
  限局性の脾臓膿瘍の切除
  鈍性の貫通性腹部外傷による限局性の損傷領域の切除
  大きな領域のバイオプシー
 手技
  切除領域に血液供給している脾門の血管を結紮する
  切除線に沿って実質を圧縮/分離する
  計画した切除線の両側を1本ずつクランプする
  被膜の辺縁は吸収糸で連続パターン縫合する
・ステープラを持ちる脾臓部分切除術

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.07
  • 一般外科/麻酔科

・脾臓全摘出術
 適応
  腫瘍の存在が分かっている、または疑われる症例
  脾臓捻転
  出血を伴う重度の外傷
  全体的な浸潤性疾患
  一部の免疫介在性疾患
腹部に腹側正中切開の準備を施し、剣状突起から恥骨までを切開範囲にすることで、腫大したり脆くなっている脾臓を持ち上げ、露出できる余裕を持たせる
脾臓は被膜を破裂させないように支えながら、”持ち上げ”るか挙上させなくてはならない
   脾臓を露出し難しくするような、大網、体壁またはその他の臓器との癒着に準備しておく
  脾臓の被膜または腫瘍が既に破裂し、血腹症になっていることが多い
  手術時に出血がある場合、脾臓脈と短胃動脈は分離次第すぐにクランプする。
 膵臓の左葉の位置
  脾臓血管に隣接した大網内に位置する
  大きな脾臓腫瘤では、膵臓左葉の尾部に近接した脾臓血管の結紮が必要となる
  部分的な膵臓摘出を行わないように、血管茎領域の大網を切開する
   膵臓の一部を結紮しても、臨床的影響はほとんど無いようである
  脾臓捻転では、結紮の際に膵臓左葉の一部も切除されるのが一般的である
・脾臓血管茎の縫合糸結紮
  血管を二重クランプして分割するか、クランプして結紮する
  通常、短胃動脈から始め、尾側に進める方が簡単である
  大半の血管は脾頭の頭側面に位置している
・脾臓血管茎に対する集束-組織結紮の原理
 各血管群は脂肪に囲まれている
 結紮を締めるときにクランプ毎に「フラッシュする」または開くことが重要である。こうすることで縫合糸が脂肪を破壊して血管に到達し、血管を虚脱させることができる.
 クランプをフラッシュさせないと、縫合の緩みと出血が起こる
・その他の方法
 The LDS (結紮と分離) ステープラーを使用して小血管と大網を結紮できる
 電熱バイポーラー組織シーリング (LigaSure) 装置を使用して直径7mmまでの血管を結紮できる
・複数の方法
 大網と脾臓腸間膜の癒着や血管新生を伴う大型の腫瘤は、複数の方法を使用して脾臓に関連する血管を結紮することができる
 脾動静脈で7mm以上の血管は、縫合糸を用いてを結紮すべきである
・脾臓捻転
  血管茎はステープル装置よりも用手結紮するほうが望ましい
   大きい締結結紮
   クランプを使用した場合、血管茎が厚いため、「フラッシング」が必要である
  血管茎の減捻は禁忌である
   通常は浮腫と血栓形成を起こしている
   血流の再確立によって再灌流傷害が起こす可能性がある
  膵臓の左葉が血管茎に捕捉されていることがある
・腹腔鏡下脾臓摘出術
  腹腔鏡下脾臓全摘出術または部分切除術は犬猫の症例で記述されている。
  これらの方法は血腹症を伴う脾臓腫瘤破裂の患者に対する緊急治療には適用しない

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.08
  • 一般外科/麻酔科

・犬10頭における多孔式腹腔鏡下脾臓摘出術の短期的結果-文献レビュー
 犬の多孔式腹腔鏡下脾臓摘出術の手術方法を記述し、短期的な結果を報告すること
 脾臓は比較的正常な大きさで、選択的手術を受ける犬10頭
 大型の腫瘍、血腹症または転移性病変には適さない
・犬の脾臓摘出術の実施におけるサージカルステープラーに対する血管シーリング装置による手術時間の短縮—文献レビュー
 血管シーリング装置を用いて実施した犬の脾臓切除術の手術時間は統計的に有意に短く、結果に悪影響を及ぼさなかった
 血管シーラーでは平均時間が58.4分で、ステープリング装置は60分であった
 血管シーリング装置で有効かつ安全な止血を行うには、術者は限界となる可能性のある血管サイズについて熟知しておくべきである(最大7mm)
・脾臓の外傷
 外傷で脾臓を摘出した犬猫の生存に関する予後は、周術期を生き延びた場合は非常に良好である
・脾臓捻転
 犬では脾臓捻転はまれで、猫では報告されていない
 病因は不明
  胃脾間膜と血管の断裂により、胃拡張/捻転に関連していると考えられる
 脾臓捻転は急性または慢性として発現する
  犬の半数以上は3日以上の臨床症状がある
 臨床的に他の腹痛の原因との区別は困難である
  元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、多尿、多飲、尿の変色、体重減少といった漠然とした症状
 急性脾臓捻転の犬は血液量減少または毒素ショックの症状を呈することがある
  白血球増加症、貧血、血小板減少症
  生化学分析は肝酵素と膵酵素の上昇を示すことがある
 診断 – X線検査
  正常な脾臓の陰影が欠如している
  捻転した脾臓は腹部中央の腫瘤として現れる
  腹部ラテラル像ではC型の脾臓が明らかなことがある
  慢性捻転では、梗塞と虚血によって実質に壊死を生じた場合、ガスパターンが認められることがある
  腹水が存在する場合は腹腔内のディテールが消失する
 診断 – CT スキャン
  脾臓が造影剤で増強されない
  脾茎部領域の捻れた軟部組織腫瘤
 診断 – 超音波検査
  瀰漫性で低エコー性の脾臓実質を伴う全体的な脾腫
  多くの症例は超音波画像で梗塞の所見が認められる
  慢性捻転では、組織壊死が生じていると実質にガス陰影を示すことがある
  慢性捻転の症例は、血管茎、大網、および小腸が癒着している可能性がある
  脾臓捻転の急性と慢性症例の両方において、カラーフロードプラー超音波画像は、脾門血管を通る血流の消失を検出する上で特に有用である
・治療
 内科的支持療法
  ショックと血液量減少の症状に対する治療、酸塩基平衡異常の修正、必要に応じて輸血
  脾臓摘出術
  脾臓の減捻を試みてはいけない
   隔離されていた血液、血栓、微小血栓、フリーラジカルのような細胞破壊産物、腫瘍壊死因子、およびその他の血管作動性化合物が全身循環に放出される恐れがある
  急性症例には緊急脾臓摘出術が推奨される
  急性捻転の整復が記述されているが、上に挙げた要素による毒血症と、既存の脾臓血栓症の可能性があるため、推奨しない
  我々の病院では25kg以上の犬に対し、将来起こりうる胃捻転の対策として、予防的胃腹壁固定術を実施している
・予後
  症例が周術期のショック、毒血症および不整脈を克服して生存した場合の予後は良好である
・犬2頭における慢性脾臓捻転 –文献レビュー
 元気消失が4ヶ月続き、食欲不振および非再生性貧血を呈する5歳、避妊雌のプードル
 軽度の腹痛が2週間続き、排便障害および間欠的な食欲不振を呈する5歳、去勢雄のフレンチブルドッグ
 どちらの犬もBモード腹部超音波画像で脾臓の位置の変化、エコー源性および/またはエコーテクスチャーの低下が確認されたほか、カラーフロードプラー超音波画像で脾臓血流の低下または消失が認められたため、これらの所見に基づいて慢性脾臓捻転と診断された
 どちらの犬にも脾臓摘出術を行い、臨床症状はそれぞれ、術後2ヶ月後と4ヵ月後に完全に消散した
 結論:
  脾臓捻転は急性と慢性のどちらも認められる
  貧血は認められる場合と認められない場合があり、臨床症状は非特異的ではっきりしない
  超音波検査ではドプラーによる評価が脾臓捻転の確認に有用である
  手術から生存した犬の長期的予後は良好である

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.09
  • 一般外科/麻酔科

・脾臓の腫瘍
 犬では一般的である:病変の33%から66%が腫瘍性である
 猫はそれほど多くない:37% から73%が腫瘍性と報告されている
 血管肉腫は犬で最も多い腫瘍性病変である
 ジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリーバーおよびゴールデン・レトリーバーの罹患が最も多い
 診断時の犬の平均年齢は9歳から11歳であった
 性別による素因はなかった
 脾臓腫瘍からの出血が最もよく起こるが、肝臓の腫瘍から出血している場合や、両方の部位から出血していることもある
 血管肉腫は急速な成長と広範囲の転移が特徴である
 脾臓血管肉腫の胸腔内播種には以下の病変が含まれる:
  右心房病変
  胸骨リンパ節と気管気管支リンパ節の腫大
  肺または強膜の結節
 犬では、右心房病変が存在しなければ、転移性病変(主に肝臓)は腹腔内に限局している可能性がある。
 右心房病変は原発腫瘍の発生部位として2番目に多く、脾臓からの転移性病変ではないかもしれない
・グレードIIIの脾臓血管肉腫
・脾臓のその他の腫瘍:
 平滑筋肉腫、未分化肉腫、線維肉腫、骨肉腫、脂肪肉腫、粘液肉腫、肥満細胞腫瘍、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ腫、転移性腺肉腫、骨髄増殖性疾患
・猫の脾臓疾患は腫瘍性が最も多い
 超音波画像で脾臓疾患の所見が認められた猫の73%までが、脾臓の腫瘍と診断されていた
 猫の脾臓腫瘍で最も多いのはリンパ腫と肥満細胞腫瘍である
 猫で報告されているその他の腫瘍:
  骨髄増殖性疾患、血管肉腫、未分化肉腫、転移性癌、腺癌、線維肉腫、脂肪腫、転移性メラノーマ、悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫
・肥満細胞腫瘍 – 猫の脾臓
・脾臓腫瘍の臨床症状:非特異的であり、以下の症状が挙げられる:
・脾臓腫瘍の身体検査所見:非特異的
・脾臓の腫瘤/腫瘍が疑われる場合の診断検査
 血液学的検査所見は非特異的で、常に異常が認められるわけではない
 貧血は、特に出血が起こっている場合は一般的に認められる
 心エコー検査
 胸部CTスキャン
 腹部超音波検査
・脾臓腫瘍に対する治療
  患者の安定化、脾臓全摘出術とバイオプシー、肝臓、腸間膜、リンパ節、腹膜表面を調べる、脾臓が転移する領域:
・脾臓腫瘍の予後
 脾臓腫瘍の犬の予後は、腫瘍のタイプとステージングによって様々に異なる
 血管肉腫は非常に悪性度の高い腫瘍で、予後は不良である
  生存期間は通常、一定していない
  手術時の腫瘍のステージに依存する
  術後化学療法の使用にも、ある程度は依存している
  回顧的研究では、脾臓血管肉腫の犬の2ヵ月生存率は31%であった; 非腫瘍性血腫の犬の2ヵ月生存率は83%であった
  脾臓摘出の1年後、血管肉腫の犬の7%が生存していたが、これに対し、非腫瘍性血腫の犬は64%が生存していた
  腫瘍のステージが高く、病変の数が多いほど生存期間は短くなる
  血管肉腫のために脾臓摘出術を受けた高齢犬は、若齢犬よりも長く生存する
 化学療法は顕微鏡的腫瘍の犬に最も効果的である
  肉眼的転移(グレードⅢの腫瘍)のある犬は、生存期間が延長する可能性が最も低い
 犬の血管肉腫に最もよく使用される化学療法剤はドキソルビシンである
  様々なプロトコールによる生存期間は140から202日である
 メトロノーム (継続的低用量経口)化学療法は、脾臓血管肉腫の犬における生存期間延長の効果が期待されている
  エトポシド/シクロフォスファミド/ピロキシカムがドキソルビシンの代わりに使用されている
  ある研究では, メトロノーム療法を行った犬の生存期間中央値は178日であったのに対し、ドキソルビシン治療を受けた犬では133日であった
・その他の脾臓腫瘍の予後は、タイプに依存する

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.10
  • 一般外科/麻酔科

・脾臓リンパ腫を脾臓摘出術で治療した犬の転帰と予後因子 (1995-2011)-文献レビュー
 脾臓リンパ腫を脾臓摘出術で治療した犬の転帰、予後因子としての他の部位への波及や補助化学療法、犬の悪性リンパ腫におけるWHOによる組織学的分類の影響について評価した
 組織学的に脾臓リンパ腫と診断され、脾臓摘出術で治療した飼い犬28頭。補助化学療法を行った犬と行わなかった犬を対象とした。全体的な生存期間、無病期間、および死因を確認した。
 脾臓リンパ腫を脾臓摘出術で治療した犬の1年生存率は58.8%で、その後に当該疾患で死亡した犬はいなかった
 B細胞リンパ腫はその他のタイプの脾臓リンパ腫よりも生存に対する予後が良好であった。
 術前または術後の補助化学療法は延命効果をもたらさなかった
・犬の脾臓脂肪肉腫: 13 例 (2002-2012)-文献レビュー
 脾臓脂肪肉腫に罹患した犬における臨床症状、診断検査所見、外科的治療および転帰を記述した。
 回顧的研究; 脾臓脂肪肉腫に罹患した飼い犬13頭; 全頭に脾臓摘出術が実施された。
 脂肪肉腫は皮膚と皮下組織のまれな間葉系腫瘍で、脾臓のような内臓器官にはごくまれに認められる。腫瘍は脂肪芽細胞から生じ、局所浸潤性が強い。転移はまれだが、起こる場合は通常、肺または腹腔内臓器である。
 脾臓の脂肪肉腫はまれに報告される。
 犬の平均年齢は11.7歳であった。
 臨床症状は食欲不振、腹部膨満、筋力低下、体重減少、テネスムス、嘔吐、下痢であった。
 全ての犬において腹部画像検査で孤在性の脾臓腫瘤が認められた
 貧血は13頭中7頭で検出されたが、血腹症の犬はいなかった
 術後の全生存期間中央値は623日であった
  グレード 1: 1009 日
  グレード 2: 206 日
  グレード 3: 74 日
 補助化学療法を受けた犬はいなかった
 転移は全ての犬で肝臓に生じた; 肺転移を起こした犬はいなかった
 結論: 脾臓の脂肪肉腫はまれな腫瘍だが、充実性の孤在性脾臓腫瘤がある犬の鑑別診断には含めるべきである
 グレード2および3の脾臓脂肪肉腫の犬と、診断時に遠隔転移のある犬の予後は不良である
 脾臓脂肪肉腫の犬では補助治療として化学療法を考慮すべきである

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.11
  • 一般外科/麻酔科

・良性の脾臓腫瘤
 多くの犬において、限局性脾腫の最も一般的な原因は脾臓の血腫と反応性過形成であるが、臨床症状は伴う場合と伴わない場合がある
 リンパ過形成結節によって起こる血腫は、脾臓の血管腫瘍に誘発された血腫とは区別できないため、空洞形成病変のある脾臓はすべて脾臓全摘出術が適用される
 脾臓の血腫は巨大になり、患者の体重の10%以上を占め、腹腔の大部分を占拠することがある
 非外傷性血腹症の犬のうち、約25%は血腫が破裂していると予測できる
 血腫が報告された犬の平均年齢は9.5歳である
 脾臓血腫の犬は非常に高率で手術から生存し、退院している
 脾臓の結節性過形成または血腫の犬における長期的予後は優良である
 脾臓腫瘤に関連した血腹症は長期生存の可能性を持つ治癒可能な症候群かもしれないという点を、理解しておくことが非常に重要である。
  一部の獣医師の間では、未経験な臨床獣医師が全ての症例で血腹症と血管肉腫を関連づけ、誤って安楽死を提案することが憂慮されている。
・脾臓の膿瘍
  脾臓の膿瘍は犬猫における限局性脾腫のまれな原因である
  脾臓全摘出術で治療し、局所性または全身性の感染拡大がなければ、予後は良好である
・術後合併症
 出血
  不適切に結紮された血管および/または他の腹腔内腫瘍部位からの出血は、脾臓全摘出術後に最もよく起こる合併症である
  必要に応じて、貧血を継続的に治療するためのベースライン値として、術後のPCVを測定する
 血管障害
  膵臓左脚の血管障害は、脾臓捻転に関連して生じるか、脾臓切除時に膵臓の血管/脚を結紮することで生じる場合がある
  脾臓腫瘤が静脈還流を圧迫することで、膵臓に重度のうっ血が認められることがある
  脾臓摘出術は急性門脈血栓症を引き起こすこともある
 不整脈
  一般的な合併症は心室性期外収縮と心室性頻脈である
  脾臓切除術を受ける犬の36%から44%に不整脈の発生が報告されている
  脾臓血管肉腫の犬の44%までが重度の不整脈を起こすことが報告されている
  提案されている不整脈のメカニズム
   心臓への還流減少に続発した心筋の虚血および低酸素症
   腫瘤の破裂および失血による血液量減少性ショック
   腫瘤が後大静脈を圧迫することによる心臓への還流減少
   酸塩基および電解質の不均衡
   微小血栓による限局性の心筋壊死
   血液量減少や膵臓血管障害に起因した膵臓虚血によって産生される心筋抑制因子
・術中と周術期に心電図を持続的にモニターすることが推奨される
  ほとんどの犬の不整脈は、術後1-5日以内で消散する
  以下の犬では治療を開始する:
   血液動態が不安定である(灌流不良、低血圧、酸素化不良)
   ECG上で多形性の波形が見られる
   急速な心室性頻脈 (> 160-175 拍/分)
   R-on-T 波
・ECGモニターで見られるR-on-T波
 T波に重なるR 波は先行するT波の異所性拍動による心室性脱分極を示す. Smirkは、これらの早期拍動は心室細動と突然死の前兆であると考えた
・不整脈の治療
 塩酸リドカイン
  2 mg/kg を静脈内ボーラス投与し、次に25〜80 µg/kg/分の長時間注入を行う
  リドカインはアンピシリンナトリウム、セファゾリンナトリウム、メソヘキシタールナトリウム、フェニトインナトリウムと混合投与できない
  リドカインはドパミン、エピネフリン、イソプロテレノールまたはノルエピネフリンと混合投与できない
  手術を受ける犬は血管アクセスポートを2箇所以上設置すべきである
 塩酸プロカインアミド
  10 mg/kg を静脈内ボーラス投与後、 20 µg/kg/分で持続注入する
 ソタロール経口投与
  心調律が正常に戻るまで0.5 〜2 mg/kg 1日2回, その後、1日1回に減量して3日間投与して中止する。再発についてはECGを定期的にモニターする。
 ケージまたは鼻カニューレによる酸素補給は不整脈の治療を助ける
・胃拡張捻転
 早期では術後5日の発症が数例で記述されている
 20KGを超える犬は全て、脾臓摘出後に選択的胃腹壁固定術を実施している

1. 脾臓: 手術の適応と最新の文献レビュー vol.12
  • 一般外科/麻酔科

・胃拡張捻転の危険因子としての脾臓摘出術の評価
 術後のGDVの発生率は脾臓摘出術群(8.1%)と腸切除術群(6.4%)で有意差はなかった
 著者は予防的胃腹壁固定術をルーチンに行うことを支持しなかった
・犬の過去に受けた脾臓摘出術と胃拡張捻転の関連性: 453 例 (2004-2009) – 文献レビュー
 結果: GVD群の犬6頭および対照群の犬3頭に脾臓摘出術を受けた経歴があった。過去に脾臓摘出術を受けた病歴のある犬のGDVオッズは、脾臓摘出の病歴がない犬のGDVオッズ比の5.3倍であった
・感染症
 稀である。
・酸素輸送
・脾臓腫瘤のため脾臓摘出術を受ける犬の周術期死亡に対する危険因子:539例 (2001-2012)-文献レビュー
 血小板数が10,000 /µl減少する毎に、死亡のオッズは約6%増加した
 PCV <30%の犬は、 死亡のオッズがPCV > 30%の犬の約2倍であった
 術中不整脈を発症した犬は、死亡のオッズが発症しなかった犬の約2倍であった
 結論 –術前の顕著な血小板減少症または貧血、および術中の心室性不整脈の発症は脾臓腫瘤の犬における周術期死亡の危険因子になることが確認された
 腫瘤の悪性対良性についてと、患者の転帰についての考察はなかった。
・悪性および良性脾臓腫瘤の犬における腫瘤対脾臓容積比および体重比でみた脾臓重量-65 例 (2007-2008)-文献レビュー
 良性と悪性の脾臓疾患の犬には、腫瘤対脾臓容積比または体重比でみた脾臓重量に有意差があるかどうか確認すること
 PetCareでは、犬の体重の約10%以上を占める腫瘤は、一般に良性腫瘍であることを見出している
・脾臓血管肉腫を脾臓摘出術で治療し、補助化学療法を行った場合と行わなかった場合の犬の生存期間: 208 例 (2001-2012)-文献レビュー
 脾臓血管肉腫を脾臓摘出術のみで治療した犬の生存期間を調査し、可能性のある予後因子を特定し、補助化学療法の効果を評価すること
 生存期間と有意に関連していた予後因子は臨床ステージだけであった
 フォローアップ期間全体を考慮すると、手術のみで治療した犬と、手術および化学療法で治療した犬の生存期間に有意差はなかった。
 ステージⅠで、手術のみで治療した犬の生存期間中央値は5.5ヵ月であった
 グレードⅡの犬の生存期間中央値は2.0ヵ月であった
 ステージⅢの犬の生存期間中央値は0.9ヵ月であった; 1年生存した犬はいなかった
 犬の血管肉腫を強力に治療するための合理的アプローチは、ドキソルビシンを含む従来のプロトコールと、シクロフォスファミドおよび非ステロイド系抗炎症剤を含むメトロノーム療法の併用になるだろう
・猫の脾臓摘出術後の転帰-文献レビュー
 脾臓摘出の理由で最も多かったのは肥満細胞腫瘍であり、19頭中10頭(53%)に認められた
 血管肉腫が19頭中4頭(21%)に認められた
 リンパ腫は2頭(11%)に認められた
 腫瘍性疾患の猫の生存期間中央値は197日、非腫瘍性疾患の猫は339日であった
 肥満細胞腫瘍の猫の平均生存期間は132日で、血管肉腫では197日であった
 術前、術中、術後での不整脈は報告されなかった

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.01
  • 一般外科/麻酔科

・軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方
・アセプロマジン
 優れた周術期の鎮静剤である
 数多くの古い麻酔学の教科書や発表論文では、アセプロマジンがケイレン発作を招く可能性について警告している
 (以下は間違い) ケイレン発作の病歴がある、または品種傾向のある犬には使用しない。肝性脳症のある犬には使用しない。
・Tobias KM et al. J Am Anim Hosp Assn 2006; 42: 283
 鎮静目的で用いた36頭の犬では、投与16時間以内にケイレン発作は認められなかった
 活発な発作を呈する10頭中8頭の犬は、アセプロマジン投与後に、発作が和らいだ(1.5 – 8時間、n =6)、もしくは再発しなかった(n=2)
 門脈体循環シャントの動物では、5 – 10%が外科的整復後にケイレン発作を発現すると報告されている
 アセプロマジンは、門脈体循環シャントの整復術を受ける犬の麻酔前・後の薬剤として使用されている
  0.05 mg/kg IV、小型犬では総量0.25 mgまで
 術後にケイレン発作を生じないのは、短い手術時間、血糖値のコントロール、鎮静剤として使用したアセプロマジンの使用によるものである
 プロポフォール導入後に痙攣重責になる例の報告がある。ジアゼパムなどでもコントロールできなかった。麻酔専門医によるとこの場合の推奨第一選択はアセプロマジン 0.5~2mg/kg IV 効果が出るまで。

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.02
  • 一般外科/麻酔科

・外科結び
 Half hitch(ハーフヒッチ:ひと結び、半結び)
  張力のある状態で組織を並置させるときに行う
  深い位置で結紮するときに行う
・Half hitch
 最初はスクエア・ノット(本結び、こま結び、男結び)と同じ
 スクエア・ノットの完成
 左側の糸を引っ張る
 片方の糸を引っ張ることで結び目が回転し、Half hitchになる
 これで2つのループは引っ張られている糸に沿って下側へと移動できる
 結紮の完了
 もう一度行えば結紮はさらに確実になる
・大量組織を結紮する時の原則
・Miller’s Knot(巻き結び、とっくり結び)
  より確実な結紮に用いる
  一重目が緩まない
  大量組織の結紮に優れている
・Miller’s Knot
 茎周囲に一重目をかける
 一重目完了
 縫合糸を再度茎周囲に巻きつける
 二重目完了
 縫合糸を一重目の糸の下に通し、Miller’s knotを作る
 別方向から
 結紮を締める
 この結び目は滑り落ちることなく、結紮部分を保持できる

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.03
  • 一般外科/麻酔科

・縫合糸 – 私の好み
 一つしか縫合しを持てなければ、PDSかマキソン
<吸収糸>
・PDS II
 ポリジオキサノン – 緩徐に加水分解される
 強度保持力
  2週間目で80%、4週間目で70%、6週間目で60%
 メモリー(糸のクセ)は中程度
・モノクリル
  Poliglecaprone 25 – 加水分解される
  強度保持力
   7日目で60-70%、14日目で30-40%
  メモリーは最小限
・コーテド・バイクリル
  Polygalactin 910; 編み糸あるいはモノフィラメント、加水分解される
  強度保持力
   14日目で75%、21日目で50%、28日目で25%
  マイクロサージャリー用に8-0を利用できる
   $40/pkg
  メモリーは最小限
・クロミック・ガット
  アメリカではもう入手できなくなってきている。
  羊の粘膜下織あるいは牛の漿膜、蛋白分解される
  強度保持力 – 21-28日間
  メモリーは最小限
<非吸収糸>
・プロリン
  ポリプロピレン
  強度保持力 – 確定されていない
  メモリーが著しく強い!
・ナイロン
  ナイロン – モノフィラメント、編み糸 
  強度保持力 – 20%喪失/年、アミド基
  マイクロサージャリー用に8-0〜11-0を利用できる
  メモリーは最小限
・外科用ステンレス・スチール
  極めて安価
  結紮部位の保持力は優れている
  よじれない扱い方を習得すれば使いやすい
  繰り返しのオートクレーブが可能
  <針>
   より大きい縫合
    CT-1かCT-2、あるいはSH 弯曲は½
   より細かい縫合、4-0〜6-0
    BV-1、弯曲は3/8
・白線、筋膜
 PDS
  猫では2-0 - 3-0
  犬では1 - 2-0
 栄養状態が悪い、敗血症が存在する、または生じる可能性がある、近い将来に化学療法または免疫抑制療法を実施する、といった患者には
  プロリン
・尿路系
  膀胱、尿道、腎被膜、造瘻術
   モノクリル
   管腔内に存在すると急速に吸収される
   尿道造瘻部から除去する必要がない
  猫の尿管
   8-0のバイクリル
・口腔外科
   モノクリル
    初期の強度保持力が優れている
    軟らかく、迅速に吸収される
・腸管
  PDS
  私は腸切開術を単純結節縫合で閉鎖している
  近く化学療法を予定している場合はプロリンを考慮する
・ヘルニアの修復
  プロリン
  小型の臍ヘルニア、デブライドが容易、吸収性縫合糸
・皮膚
  ナイロン、モノクリル、より柔軟で扱いやすい糸
  手術台や器具台に残っている糸どれでも
  ステープラー

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.04
  • 一般外科/麻酔科

・卵巣摘出術 vs 子宮卵巣摘出術?
 健康な雌の犬猫を中性化するために多くの国々で選択される手技である
・卵巣摘出術(OVE)
 卵巣摘出術を選択するのはどのような場合か?
  子宮疾患が存在しない健康な犬猫全て
  極めて若齢の動物
  生殖器が低形成の動物(8週齢などの若齢)
 OVEとOVHでは、以下の点について有意差が無い
  子宮内膜炎/子宮蓄膿症
  尿失禁
  OVEの方が術後の腟出血が少ない
・卵巣摘出術-テクニック
 卵巣茎を鉗子で挟みOVHと同様に結紮する。
 結紮糸を鉗子の尾側(遠位)に通して固有靭帯を正しく結紮するため、カーマルト鉗子をどの位置にかけているかに注目。
 卵巣茎は二重結紮する。
 当該する固有靭帯を単純結紮する;鉗子の尾側(遠位)。結紮を締める際、鉗子を“フラッシュ”する。 固有靭帯を結紮して、子宮動静脈と卵巣茎に交通している血管分枝を閉塞する。
 卵巣茎を切断する;茎を放す前に、
 卵巣全体が完全に除去されているかを確認する。
 卵巣全体が切除されていることを再度確認する。

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.05
  • 一般外科/麻酔科

・軟部組織肉腫(STS)
 軟部結合組織由来の間葉系腫瘍
 身体のどの解剖学的部位にも発生し得る
  皮膚および皮下組織に多い
 犬では皮膚および皮下組織の腫瘍全体の約15%を占める
 猫では皮膚および皮下組織の腫瘍全体の約7%を占める
・STSの種類 (Dennis et al. Vet Pathology, December 2010)
 様々な組織で構成される。一番多いのは線維肉腫、末梢神経鞘腫瘍
 STSでは複数の組織学的パターンを呈することが多い
 犬の軟部組織性紡錘細胞腫瘍とするようになった
・STSの治療
 外科手術(以前)
  従来推奨されている手術法では、“広範かつ根治的な”切除が必要とされていた
  広範切除とは、腫瘍の周囲30mm X 30mm、深部は筋膜面1枚分まで、または30 mmのマージンを達成することである
  根治的切除とは、筋肉、骨、および/あるいは四肢を含めた、腫瘍が存在する領域全体を除去することである
・STSのマージンに関する用語の現在の記述
 外科手術(現在)皮膜があるので、3〜5mmのマージンが推奨。
 マージン不完全
  腫瘍細胞が、どの切除平面であっても、少なくとも一つのマージンと連続している
 マージンが狭い
  外科的に作成した組織縁と腫瘍細胞との距離が3 mm未満である、または、サージカル・マージンには偽被膜より外側の正常組織が含まれていない
 完全なマージン
  外科的に作成した組織縁と腫瘍細胞との距離が少なくとも3-5 mm
・予後
 予後は良好
 治療の目標は腫瘍の局所コントロールである
 転移率は低く、緩徐であり、高グレードの腫瘍だけに発生すると考えられる
 腫瘍のグレードは再発と生存期間を予測すると思われる
  全体の中央生存期間
   外科手術のみで、1416日
   外科手術および局所の放射線照射で、2270日
 STSの患者は、局所コントロールができれば長期間生存が可能である
 再発防止には必ずしも30 mmの完全なサージカル・マージンが必要なわけではない
 今の段階では、組織学的グレードおよび有糸分裂指数が最も有用な予後指標である
 STSの生物学的特性をより深く理解するには、よく定義された対照臨床試験が必要である
・症例:Juno、9歳、去勢雄、クーバース
 飼い主は、腫瘍と共に眼球摘出も行う必要があるだろうから、大きな問題になるまでは腫瘍をそのままにしておくよう指示された
 手術手技(写真解説)
 組織病理学的検査 = 線維腫
・症例: 雑種犬、避妊雌、10歳、会陰部の6X8 cmの腫瘍
 低グレードの肉腫、完全切除
・症例:Hershy、12歳、避妊雌、ロットワイラー/シェパード雑種 末梢神経鞘腫

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.06
  • 一般外科/麻酔科

・腸管および肝臓の簡単なバイオプシー・テクニック
 従来のテクニック
・3mmパンチバイオプシー法
 3mmの穴はPDSによる2ヶ所の単純結紮縫合で閉鎖
 生食でサンプルをパンチからフラッシュする
・肝葉内の肝バイオプシー
6mmパンチバイオプシー法
バイオプシー採取部をゲルフォームでカバーする
ゲルフォームはかなり高価
・腸管および肝臓の簡単なバイオプシー・テクニック
 in vitro での血小板凝集は、哺乳動物組織から抽出された化合物によって誘導することができる。
 肝臓、脳、心筋、骨格筋は、顕著で肉眼的に明らかな血小板凝集を一貫して誘導する。
・腸管および肝臓の簡単なバイオプシー・テクニック

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.07
  • 一般外科/麻酔科

・食道瘻チューブ
 衰弱した患者に周術期の栄養を供給する
 慢性疾患で食欲不振の猫の管理にしばしば   有益である
  肝リピドーシス
  “具合の悪い猫はすべて、栄養チューブを必要としている"
 腎不全の猫には特に効果的である
 薬剤の経口投与が行いやすくなる
 14-18 Frのラバーチューブを、第7-8肋骨の位置で切断する
 Kelly鉗子を近位食道に挿入
 鉗子の先端が皮膚の下に触知できたら、先端上部で皮膚を切開する
 Kelly鉗子でチューブを挟み、口腔内に引き込む
 チューブを反転させ、食道内に進める
 食道内に正しく入っていればチューブは指で持って回転させることができる
 チューブ先端は、心臓と横隔膜の間に位置させる
 チューブを縫合して固定する

2. 軟部外科手術に役立つ手技と現在の考え方 vol.08
  • 一般外科/麻酔科

・大型皮膚欠損部を閉鎖するための双茎皮弁
 切除部位を閉鎖する皮弁として動いたあとの欠損部に緩んでいる皮膚を前進させる
・症例:血管肉腫を双茎皮弁で閉鎖
 皮弁を尾側に前進させる;皮弁によって生じた欠損部は胸部頭側の緩みのある皮膚で閉鎖する
・症例:肥満細胞腫瘍を双茎皮弁で閉鎖
・症例:線維肉腫を双茎皮弁で閉鎖
・症例:直腸穿孔後に生じた膿瘍による皮膚欠損
 創傷の左右に双茎皮弁を作成
 創傷部の閉鎖に続き、皮弁移動後の欠損部は、欠損部頭側の緩みのある皮膚を利用して閉鎖する
・粘膜が外反しない腸管の縫合法
 漿膜面から入り、45度の角度で粘膜の断端で内腔に入り、軟膜から45度で漿膜に出す。
 針は切開線より数mm後方の漿膜に刺入し、ちょうど粘膜縁の部位から出す
 対側は、針を粘膜縁から刺入し、切開線から数mm離れた位置の漿膜に出す

動画要約(全文)

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